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焼結における塑性変形の役割~序論~|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

焼結における塑性変形の役割~序論~

焼結における塑性変形の役割は論争の多いテーマである。
研究者の多くは、焼結で観測される物質輸送現象は外力を及ぼさない場合には、拡散流動過程で説明されるとし、塑性流動は起こっていないと考えてきた。
この観点における塑性流動は、応力が転移源から転移を増殖して転移が滑りを起こす過程である。

拡散流動による物質輸送は解析的に取り扱うことができる。
すなわち、粉末粒子列を焼結するときに起こる幾何学的変化を理論的に計算することができる。
計算値と実測値を比較することにより、焼結における拡散流動の重要性についての結論を導くことができる。
組成流動を同じように取り扱うことは大変難しい。

拡散流動による物質移送というテーマは、過去40年間にわたって研究されてきた。
最近の研究例としては、1983年に公表されたHwangとGermanのものがある。
その論文で彼らは球形金属粉の配列体の焼結過程についてコンピューターシュミレーションを行っている。
この方法では、これまでなされてきた数多くの幾何学的近似は排除されている。
球形銅粉の配列体の幾何学的変化に対する計算値と従来の実測値との比較はHwangのPh.D論文に述べられている。
焼結における物質輸送が拡散流動モデルによって、いかにうまく説明されるかを示すために、まず最初にHwangとGermanによる焼結プロセスのモデル化および銅粉の焼結についての計算値と実測値との比較について本論文の最初の部分で簡単に述べておきたい。

塑性流動は外部から応力をかけた場合には、転移の増殖と滑りにより特徴づけられるから焼結における転移の増殖と転位密度の変化を見る実験からスタートすると考えたいところである。
しかしながら、転移を研究するための実験技術はあまり進展していない。
それゆえに、焼結における塑性流動の役割を研究するために、最初は間接的な方法がとられた。
銅粉および銀粉配列体についてのクリープ実験がその一例である。
その後、基地中にマーカーを含む粉末粒子や細線を用いた実験が行われた。
つまり、焼結中におけるマーカーの動きは、拡散流動による物質輸送を示すものではなく、むしろ塑性流動を示すものと考えられるからであった。
ついで、単結晶の亜鉛細線の焼結におけるネック成長におよぼす結晶異方性の影響が実験的に明らかにされた。
さらに別の実験では泡模型を用いており、焼結における転移の運動がモデル化されている。
本論文の第一番目に 、これらの実験について簡単な検討を加える。
 
焼結粒子列についての転移の増殖と転位密度の観測は1970年代に開始された。
銀円板を焼結したときに形成されたネックにおける転移を透過電顕により観察したのが最初である。
その仕事はShattとその一派により引き継がれ、エッチピット観察による定性的な転移増殖の観察、およびX線コッセル法による転位密度の測定など精力的な研究がなされた。  

焼結過程において転位が増殖されるのは、ほぼ疑いのない事実であるが、焼結における物質輸送を起こす毛管力の作用によりこの転位がどのように増殖されるのか、まだ説明されていない。
この問題を解決するための試みを最後の部分で概述する。


焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 祐介 共編

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