セラミックスの寿命と破壊(1)|セラミックス技術コラム
セラミックス技術コラム
セラミックスの寿命と破壊(1)
強度分布を完全に記述するための第一歩は、欠陥寸法のばらつきによる本質的変動と、体積効果(これにより、ある大きさの欠陥が存在する確率が制御される)とを分離することである。
同一の統計的母集団に属するリンク(環)から、ランダムサンプリングによって作成した異なる長さの鎖の強度について考えてみることにしよう。
個々のリンクの強度は変動し、応力σを受ける任意の1個のリンクの生存確率はS1であると仮定する。
すると、n個のリンクからなる鎖の生存確率Snは、Sn=S1^n
S<1であるので、定義により、応力σに耐えることのできる長い鎖の生存確率は短い場合のそれよりも小さい。
これはよく知られた常識 “鎖の強度はその最も弱いリンクの強度に等しい” に由来する。
そのため、リンクの数が多ければ多いほど、弱いリンクが含まれる確率が高くなる。
個々のリンクの生存確率S1は応力のみの関数であって、次式で定義される、破壊の危険率(risk of rupture)R1で表示するのが便利である。
S1=exp(-R1)
ここでR1もまた応力の関数である。鎖の破壊の危険率Rnは、次式に示す2つの定義式から、nR1となる。
Sn=exp(-Rn)
In Sn=nInS1=-nR1=-Rn
大きなnに対して、近似的に次式が成立する。
dRn=R1dn
鎖に対して、上式は特別な意味をもたない。
なぜなら、nは数えられる数であり、リンクの一部を切り出して鎖に付け加えることができないからである。
しかし、このモデルをセラミックスの体積効果に当てはめるとき、・・・この場合無限小変化dnは意味を持つ・・・任意の体積の破壊の危険率は、次のように表される。
dR=R1dV
または
R=∫vR1dV
ここでR1は基準体積(任意に選択できる)に対する破壊の危険率で、応力のみの関数である。
ここまでの解析で、天下りの部分は何もない。
これは単に単位体積当たりの欠陥の危険率に起因する破壊確率を分離するための数学的形式化であり、対象としている体積中に含まれる単位体積の数を用いているに過ぎないからである。
ワイブルの重要な貢献は、経験に基づいて次式を発見的に見出したことにある。
R1=(σ-σt/σ0)^m
ここでσは負荷応力であり、他の記号は材料定数である。
R1を定義した過程ではσtを用いて説明することができる。
σ=σtのとき、R1=0であるので、S1=e0=1、したがって、σtは生存確率が1となるしきい値(threshold stress,位置母数)を意味する。
セラミックスに対しては、たとえある環境下での正のσtが存在するとしたとしても、σt=0とおくのが賢明であろう。
というのは、圧縮応力のみが、石造りの家と同様に安全だからである。
セラミックスの寿命と破壊 松尾陽太郎 編訳
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