液相存在下の焼結における緻密化I. 理論 ~駆動力~ |セラミックス技術コラム
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液相存在下の焼結における緻密化I. 理論 ~駆動力~
緻密化プロセスを理解するうえにおける最善の方法は、表面エネルギーが系におよぼす力を考慮することである。固相、液相および気相間に関する界面を各々下添え字で表すと、固体の濡れおよび粒子間の完全な浸透を得るのに必要とする表面エネルギー間の関係は、次式で与えられる。
γSV>γLV>γSS>2γSL. (1)
固体が溶け液体となると、固体粒子を完全に覆う傾向をもつから、固体-蒸気表面は以下の取扱から除外できる。液相中には気孔が生じるが、この気孔における液相-蒸気表面の面積の減少、すなわち表面エネルギーの減少が緻密化をもたらす駆動力である。各々の気孔内には次の関係で与えられる負の圧力が存在する。
(2)
式中で、rpは気孔半径である。この圧力は系全体をこれと等しい静水圧下に置くのと等価で、また毛管降下において小さな曲率により表面に生じる圧力14)と等しい。鉄-銅系ではγCu=1280 dyne cm-1であり、(2)式から計算される圧力は半径1ミクロンの気孔では270 psiである。気孔や粒子間の毛管の大きさは長時間の焼結後でも、0.1-1 ミクロンの範囲のままであるから、これらの圧力は適切な駆動力となり全焼結プロセスを通して作用し続ける。この圧力は初期においては粒子を再配列し最大のパッキングを与えることになる。ついで、接触点における圧縮応力の大部分は液体の薄い膜により隔てられた固体粒子の架橋(bridging)が担う。このことは図2に示した液体により隔てられた2個の球を考慮することにより明らかとなる。これらの球は毛管圧力により支えられている。P=-γLV/r 。完全な濡れ性をもつ水-固体系においては、多くの証拠から固体粒子はこの毛管圧力下では接触せず、粒子間の反発力あるいは堅く強固に保持された液体膜により0.005-0.04 ミクロンの間隔に保たれることが示される15~17)。
いずれの場合でも毛管圧力は接触面での大きな圧縮力により相殺される。これらの点における圧縮応力は従来考えられていたよりもかなり大きい。この圧力が原因となって接点における固相の化学ポテンシャルあるいは活量が次式に従い増加する。
(3)
(4)
ここでK は最大接触面圧力と全等方圧とを関係づける定数である。接触点での活量は著しく増加し、物質移動の駆動力が生じて粒子の中心が接近し密度が増加する。
すなわち、緻密化時に起きる主な自由エネルギー変化は液相内の気孔表面積の減少によるもので、これが焼結の駆動力である。
宗宮 重行・守吉 佑介 共編 「焼結-ケーススタディ」
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