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液相存在下の焼結における緻密化I. 理論 |セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

液相存在下の焼結における緻密化I. 理論

 液相存在下の焼結において、緻密化の原因となる駆動力および物質移動現象に関して解析を行い、再配列、溶解-析出、および合体のプロセスの各々について緻密化速度式を求めた。液相存在下の焼結におけるメカニズムは、これらの速度式を緻密化速度の時間、粒径および温度依存性の実験結果に適用することにより求めることができる。また、物性のデータが知られている簡単な系については、緻密化速度を直接的に求めることができる。

緒言
 単相の結晶質固体やガラスにおける焼結は従来よく研究されており、表面エネルギーの影響により物質移動が生じ、それによって緻密で気孔をもたない焼結体が生じていく現象に関しては、そのメカニズムは半定量的に理解されている1)~7)。そして、焼結速度が粒径、温度および他の変数が焼結におよぼす影響が、比較的簡単なモデルについての理論式と一致することは実験的に知られている。一方、焼結速度を著しく促進する液相が存在する場合の緻密化プロセスにおいては、プロセスの速度あるいはプロセス変数がおよぼす影響について、それらの間に定量的関係が確立するという観点については従来ほとんど関心が払われていない。このような多相なプロセスは本来的に単相の焼結より複雑であるが、同時により広い応用範囲をもつ。

 ここでは我々の対象を固体主相が、その固体が一部溶解することのできる液体の作用により焼結する場合に限定する。これ以外の場合、初めの多孔質成形体が表面エネルギーの力により無気孔の構造を形成する際の物質移動は、固体状態でのプロセスと基本的に同様で何ら本質的に新しいことはない。またさらに、我々は液体が固相を完全に濡らす場合を主に取り扱う。なぜなら、もし液体が固体粒子の間に侵入しないと粒子は接触点で衝突してしまい、収縮に要求される粒子中心間の接近を起こすには、焼結が固相内の物質移動により生じなければならないからである。たとえば物質移動が溶解-析出プロセスで生じ、物質が液相内を通って運ばれたとしても、このプロセスは単相において物質が蒸発し粒子間の接触点に析出するプロセスとなんら本質的に違わない6)。これらいずれのプロセスの場合にも緻密化は生じない。

 液相存在下の焼結では一般に二つのタイプが生じる。最も普通に生じるのは粒子が球形をもち、その大きさがプロセスの間に増加する構造である。他の構造は、角柱状の粒子をもち、過剰量の液相が存在しなくても高い最終密度が得られるが、粒子の大きさの増加は少ない。図1に典型的な微構造を示す。Lenel 8)、GurlandおよびNorton 9)、CannonおよびLenel 10)は過去の文献を総括しプロセスの現象論的意義を記している。これらにおいて完全な緻密化を得るのに共通する必要条件は、(1)適量の液相、(2)固体の適切な溶解度、および(3)完全な濡れである。微構造の変化からは、緻密化においての三つのステップが認められている。第一は再配列プロセスと呼び、液相が生成し濡れることにより固体粒子が再配列するプロセスである。第二は溶解-析出プロセスで、固体の溶解および析出により密度が増加する。そして、ある場合には第三のプロセスとして固体の骨格形成が起こり緻密化速度が低下する。これは液相が固体粒子間に完全に浸透しない場合に支配的となるプロセスで、我々はこれを合体プロセスと呼ぶ。第二のプロセスは固体の溶解性に依存し、緻密化においても最も重要である。このプロセスは一般に次のように説明されていると思われる。すなわち、微細な粒子が大きな粒子に比べて液相中で高い溶解性をもつため、微細粒子が溶解し大きな粒子がさらに大きく成長するというものである。

 すでに指摘したように12)、上に述べた説明ではいくつかの問題点がある。第一に、パッキングによる要求からは、液相含有量が実験的に求めた必要量より多くないと、物質移動により大きな球をつくるだけでは緻密化は生じない。第二に、プロセスの終期においては固体粒子が大きく成長した後も緻密化が続き、実測の物質移動速度は溶解度の違いでは十分説明できない13)。最後に、液相含有量が多い試料では等方的な粒成長と早い緻密化が認められるが、図1(a)に示したように液相量が少ない焼結体試料では粒子が球形に留まらず、最大密度となる形状をとって成長する。



宗宮 重行・守吉 佑介 共編 「焼結-ケーススタディ」

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