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溶融珪素を含浸させてつくる繊維強化RB-SiC |セラミックス技術コラム

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溶融珪素を含浸させてつくる繊維強化RB-SiC

 C/C複合材料のマトリックス前駆体として炭素化収率28,31,44,56,65,85 %のエポキシ、フェノール、ポリフェニルアセチレン樹脂を使用した。マトリックスは、フィラー粉末を添加することで変化させた。

 珪素化は、適度な溶融温度(1700から1750 K)で注意深く熱処理するか、または炭素マトリックスを速くかつ完全にRB-SiCに転換するために高温(2200 K)で行う。最適な転換を行うための温度は炭素結合試料の初めの気孔率や気孔径分布に強く依存する。

 低温で珪素化(LTS)した複合材料は、粒状材料に比べて曲げ強度が改善される(Fig.24)。特に、表面がSiCになっている高弾性繊維(CVD-SiCあるいはSiCコーチング炭素繊維)ではその効果は大きい。これらの複合材料の炭素マトリックスが完全にRB-SiCに変化したならば、RB-SiC複合材料は、弾性変形限界を越えると急激な破壊を起こす。ところが、SiCコーチング炭素繊維/RB-SiC複合材料は、強度は段階的に減少し、破断歪の2倍の歪でも50 %の荷重をささえる。SiCをコーチングした炭素繊維でも挙動は同じであるが、SiCのCVD過程は炭素繊維には有害である。

 元来、多孔質なC/C複合材料を完全にSiCに変えた試料は並の強度(150から300 MPa)で脆性破壊を示す。純粋なC/C複合材料を含浸する旨いやり方は、HM炭素繊維でできた高密度試料を選び、炭素含浸を手短に行うことである。例えば1800 Kの大気圧Arガス雰囲気内で15分間含浸する。この方法で、始めのC/C複合材料の機械的性質はρB=450 MPa(ρBo=650 MPa)に向上し、表面(20-50μm)近傍の炭素繊維は、耐酸化性の高いRB-SiCに変わっている。この場合、最大応力に達する前に、非弾性変形が起こった。部分的に損傷を受けた後でも、破断歪の3倍の変形後も最大荷重の60 %を保持している。

 高温(2200 K、HTS)で珪素化し、炭素繊維を炭素マトリックスによって溶融炭素から損傷を受けないようにした高密度樹脂含浸C/C複合材料でも、非弾性変形は観察された(Fig.25、26)。前駆体は同じでピッチ系炭素繊維を用いたRB-SiC複合材料は、最高の曲げ強度(290-360 MPa)を示す。炭素化収率の特に高い前駆体は、定量的にはRB-SiCに転換しないが、部分的に珪素化された複合材料は比較的高い強度と非弾性的(擬塑性的)な応力-歪挙動を示す。

 アルミナ繊維はRB-SiCの強化体としてはふさわしくない。なぜなら、前に示したように繊維と溶融珪素との濡れ性が十分ではないし、熱安定性も十分ではないからである。PCS-SiC繊維は極めて再結晶しやすく、RB-SiC複合材料は脆性破壊を示し、曲げ強度は低い。3000本以下(1000本か3000本)のフィラメントの繊維束を用いると、非弾性的な変形を助長する。これは12000本の束を用いた複合材料に比べて、単繊維の幾何学的分布を均一にできるためである。

 完全に高密度化したC/C複合材を用いた場合、例えば粒界に金属的な珪素の膜が凝固して存在するというような遊離珪素は見あたらない。珪素の物質移動は、粒界拡散あるいは表面拡散のみで起こり、体積拡散は期待できない。溶融珪素が炭素繊維に到達すればいつでも、炭素繊維はその引張り強度が低下するような部分的な損傷を受けるであろう。PCS-SiC繊維についても同じ結果が発表されており、この場合はさらに強調される傾向さえあった。








宗宮 重行・守吉 佑介 共編 「焼結-ケーススタディ」

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