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繊維強化SiC複合材料の性質 |セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

繊維強化SiC複合材料の性質

繊維強化CVI-SiC複合材料

繊維の骨組み構造にCVIによってSiCを含浸することにより、高い曲げ強度を有する一方向あるいは二方向強化複合材料が得られる(Fig.21)。その繊維強化CVD-SiC複合材料は、あらゆるSiC複合材料の中で最も高い絶対強度を示すが、脆性的な破壊挙動を示す。この方法では、SiC繊維が元来持っている理論的引張り強度は発現できない。なぜならエピタキシャルに成長するため、繊維径が大きくなるに従って強度が低下するからである。CV基-SiC繊維とマトリックスとの接着は完全であるため、剥離による裂進展のエネルギー吸収ができない。
 高弾性炭素繊維を強化材として用いると、緻密なCVI-SiC複合材料は破断歪が0.2 %でSiC繊維を用いた複合材料と同じような応力-歪曲線を示す。最大応力で小さな非弾性変形が認められる。これは炭素繊維とCVI-SiCマトリックスとの接着の度合によって異なる。接着の度合は、沈積条件によって異なる。もし、中弾性率タイプの新しい炭素繊維が用いられれば、高い曲げ強度をもった炭化珪素複合材料が期待できる。
 多方向強化CVI-SiC複合材料は、Naslainらによって1980年に発表された5)。彼らが作製したものは、気孔率が約30 %のC/C複合材料にCVI-SiCを含浸して得られた複合材料であった。我々の実験では、2次元に配向した炭素繊維の骨組み(繊維含有率35 vol %のサテン織り)に1300 K、5 kPaで10日間CVIを施すことにより高弾性の複合材料は得られたが、繊維とマトリックスとの間の接着は完全ではなかった(Fig.8)。その結果、複合材料のヤング率はマトリックスのそれに対応したもので、曲げ強度(繊維骨組み面に垂直)は385 MPaであった。Naslainらによると、30 %の炭素と30 %のSiCから構成される同様な複合材料では、曲げ強度は我々の得た値と同様であったが、弾性率(彼らのはヤング率が50 GPa)は異なっていた。これは、二つの複合材料で炭素とSiCマトリックスとの接着強度が異なるためと考えられる。
 ポリカルボシランから作製したSiC繊維の骨組み(二次元のハーネス、サテン織り)に円管型の炉を用いCVIを1320 K、3 kPaで6日間行った複合材料では、炭素繊維織物強化複合材料とは異なり、細かく枝分かれするき裂成長を示した。それゆえ、き裂の進展エネルギーの幾分かは、層間で吸収できると考えられる(Fig.22)。この観察から、ヤング率が低くなることは妥当であろうと考えられた。1983年、Societe Europeenne de Propulsionは、PCS-SiC繊維の織物の積み重ねによる二次元強化CVD-SiCを発表したが、いずれの場合にも1300 K以上の温度では、著しい曲げ強度の低下が認められた52) (Fig.23)。





 

焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 佑介 共編

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