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炭素をマトリックスとする複合材料の反応焼結(RB)(珪素化) |セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

炭素をマトリックスとする複合材料の反応焼結(RB)(珪素化)

 セラミック工学における反応焼結は、粒子や繊維の塊からその場の化学反応によって高強度なセラミックス体を作る一つの工程である。1974年にHillingおよびその共同研究者ら27)はSiC/Si複合材料を作製する方法として炭素繊維を溶融珪素につけて反応させ、これを方向の揃ったSiC結晶に変える液体珪素含浸法を紹介した。

 液体の珪素と固体の炭素ならびにSiCとの不均一反応の理論
 各種炭素材料と液体あるいは気体の珪素との反応性に関して我々は基礎的研究28),29)を行ったが、その目標は強化繊維は珪素溶体によってほとんど侵食されず、多孔質な炭素バインダーマトリックスのみを選択的にSiCに転換することにあった。繊維の骨格を含む多孔質な炭素マトリックスを反応焼結によって炭素繊維強化RB-SiCにする作製プロセスとしては、0.1 MPaのAr減圧下の雰囲気で誘導加熱ルツボ中、あるいは高圧下のオートクレーブ内で行った。Fig.9に液体の珪素と固体の炭素との反応に対して提案されたモデルをまとめて示した。



 結論的には、濡れが完全ならば不均一化学反応におけるこの工程は、最初に形成された固体のSiC層を通しての拡散によって支配されるだろうということである。これには、よく知られている反応時間と厚さとの放物線関係を用いる。以上より、有効拡散係数は、下記の値であることがわかった。

De(1973 K)=4.2×10-10 cm2 / s (1a)
De(2073 K)=9.5×10-10 cm2 / s (1b)

これは、下記のような温度依存性を示す。
   De=Deoe-E/RT

ここで活性化エネルギー(E)は、E=132 kJ / mol でDeoは2.0×10-6 cm2/sである。
 これら基礎的な研究28),29),30)のすべては、繊維強化RB-SiCの作製に応用できる。上述したように我々は、未処理の繊維並びに耐水被覆した繊維を用い、その機械的性質は、Fig .10に示すようなものであった。CVDコーチングした高弾性炭素繊維の引張り強さは、CVDの沈積条件に大きく依存している。その沈積条件は、結晶構造、層間距離、炭素繊維への水素の化学的侵食などに依存する31)



 いくつかの耐火被覆を施した繊維に湿式ワインディング法により、フェノールやエポキシ樹脂を含浸し、乾燥させて一方向性プレプリグを作製した。そして、炭素 / 炭素複合材料を作製するのと同様に加圧し、硬化し、前駆体の固相炭素化を行って炭素結合の複合材料を作製した。炭素組成を変えることによって変化させることが可能である。Fig.11と12に異なる方法で硬化させた純粋な炭素マトリックス組成の例を示す。




 SiCウィスカー強化については、液体状前駆体混合物を用いた射出成形法と同様に、樹脂の粉とフィラーとウィスカーとを乾式で混合、溶解、そして加圧硬化させるのが適当な方法である。こうして予備成形した試料を熱処理し、炭素 / SiC複合材料とした後、珪素化する(Fig.13)。この液体珪素化法を炭素繊維強化複合材料に適用した結果をFig.14-17に示す28)
この反応で炭化珪素は形成されるが、その際、溶融珪素と繊維の反応が炭素マトリックスとの反応より優先的に起こることを抑制するための注意を必要とする。この問題は、マトリックスとして反応性の高い炭素を制御しながら作製することで解決できる。気孔率が適当なことが、主要な炭素とは反応せずに、二次的な炭素と反応し、選択的に珪素化が起こるために必要である。
このような要求は必ずしも実現可能とはいえない。Fig.1628)にマトリックス炭素のみならず炭素繊維も珪素化され、全部で30 μmの厚さの珪素化層ができた試料の写真を示す。この表面層は内部よりもずっと脆い。外表面が脆性破壊を呈しているにもかかわらず、外表面の下にある珪素化されていない炭素繊維によって、全体の複合材料としての強度と靭性が保証されていることが、破面からわかる。
 最後に、Fig.1728)に示すようにCVI-SiCと溶融珪素法と組み合せて保護に用いることができる。この試料は多孔質の炭素/炭素複合材料をCVI法で珪素化し、続いて液体珪素化法で作製したもので、その内部を示している。炭素繊維が残っていること、炭化珪素マトリックスが反応によって形成していること、余分の溶液状の珪素が残留して気孔を満たしていることが認められる。しかし、この場合、酸化抵抗性の改善と引き換えに、靭性を犠牲にしなければならない。






 

焼結-ケーススタディ 宗宮重行・守吉佑介 共編

 

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