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実験結果 |セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

実験結果

A3変態の膨張-収縮挙動をFig.1に示す。
加熱速度は3 °C/minであった。

 Fig.1から次のことがわかる1)。分散強化鉄のA3変態による収縮は通常の純鉄にくらべてかなり小さい2)。A3変態後のオーステナイトの熱膨張もまた小さい3)。A3変態は炭素銅の場合と同じように、ある温度領域で起こる4)。冷却曲線は加熱曲線から著しく偏奇する。これらの現象の詳細を次に示す。

 

 

 Fig 2は、分散強化鉄のA3変態と通常の純鉄との収縮比を示したものである。Fig 2中の点線は、アルミナを含有する鉄のA3変態における収縮に対する計画値である。見かけ密度はカッコ内に示してある。試料中のアルミナ含有量が大きいほど、見かけ密度が大きいほど、収縮比の値は小さくなる。アルミナ0 %における純鉄と分散強化鉄との差は残留する酸化鉄(主としてFeOで基相に対してアルミナと同様に作用すると考えられるが)に依存しているように思われる。

 

 Fig 3に純鉄に対する相対密度が0.97と0.86の分散強化鉄のA3変態挙動を示す。図中の右側のグラフは、a、bおよびc点で温度を一定に保持したときの試料の寸法変化を示す。見かけ密度の大きい分散強化鉄は収縮も膨張もしない。すなわちA3変態は一定の温度範囲で起こる。一方、見かけ密度の小さい試料にはそのような温度領域は見られず、その点純鉄の場合と同じである。

 

 この温度領域が他の元素の固溶に起因しているならば、密度には依存しないはずである。従って上記測定結果は、この温度領域は、例えばアルミニウムのような他の元素の基相中への固溶には依存しないことを示している。
 なお、化学分析によれば、10 vol%アルミナを含有する分散鉄中の溶質アルミニウムの量は、高見かけ密度試料について0.062%であり極めて小さい。
 Fig 4に種々の密度の分散強化鉄のオーステナイト相の熱膨張を示す。密度比0.90以上では、見かけ密度が小さいほど膨張係数は通常鉄のものに近い値になる。また見かけ密度が大きくなると、熱膨張係数は小さくなる。一方、見かけ密度が0.90以下の場合、気孔が多いほど熱膨張係数は小さくなる。この関係を明確にするために、熱膨張係数と見かけ密度との関係をFig 5に示す。この場合、基相と分散粒子の間の溶解度は考慮していない。例えば、10 vol%の酸化物を含有する分散強化鉄の総熱膨張係数は次式で与えられる。
   

ここでεFeとεoxideは、それぞれ鉄と分散酸化物の熱膨張係数である。εFeは10-6-1のオーダーであり、εoxideは10-7-1のオーダーであるから、εは近似的に9/10・εFeに等しい。このようにして計算した値をFig 5に示した。





示差熱分析
 Fig 6は、示差熱分析によって得られたA3変態における放熱あるいは吸熱挙動を示したものである。測定においては、直径4.5 mm、高さ15 mmの18-8-Cr-Niステンレス鋼を中性体として用いた。測定試料はそれと同一寸法のものであった。加熱および冷却速度は250℃/hとした。Fig 6には、純鉄の熱量を単位として、試料熱量を示してある。見かけ密度が大きいほど、A3変態における熱量は小さい。しかしながら、Fig 2に示したA3変態における収縮量の方がFig 6に示した示差熱量比にくらべて大きい。



 

焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 祐介 共編

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