考察~塑性流動と拡散流動の両方が焼結に寄与する~ |セラミックス技術コラム
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考察~塑性流動と拡散流動の両方が焼結に寄与する~
焼結に対して塑性流動と拡散流動の両者が寄与する考え方を支持する立場から、ここで二つの現象、一つは塑性流動を支持するもの、もう一つは拡散流動を支持するものに言及したい。
塑性流動を支持するものは、すでに述べたNunesの実験であり、単結晶亜鉛線の焼結におけるネック成長速度が、線が底面滑りに対して都合の良い方位関係にあるときの方がそうでない場合にくらべて2倍以上大きいことが示されている。この事実は、ネック形成に対して滑りが重要な機構であることを明確に示している。滑りは、結局は塑性変形である。拡散流動を支持する現象は、ネック表面の円滑化である。泡模型を用いて焼結実験をした場合には、ネックは転位の増殖と滑りにより成長する様子が見られるが、ネック表面の円滑化は起こらない。その反対にネックは常に鋭角を保っている。ネックが円滑化する事実は転位の運動による機構に基づく輸送機構ではなく拡散流動に基づく輸送機構を示している。
実験について述べた節で、マイクロクリープに対する二つのモデルを簡単に説明した。一つはWeertmanのモデルであり、転位源より増殖された転位は滑り面に沿って移動するというものである。転位が障害にパイルアップして運動を止められると、滑り面を抜けて上昇し、他の転位との相互作用により消滅する。滑り面からの転位の上昇は、別の転位の生成を促してクリープは継続する。このモデルは転位の増殖と滑りに基づいている。もう一つのマイクロクリープはNabarroとHerringによるもので、引っ張り応力下にある粒界から圧縮応力下にある粒界へ体積拡散あるいは粒界拡散により空孔が移動するとするものである。このモデルは拡散流動モデルであり転移の増殖あるいは滑りを含まない。
焼結における物質輸送機構に関する初期の研究の中には実験の節で述べたクリープ実験がある。その場合の基本的考え方は、マイクロクリープのモデルおよびその輸送機構メカニズムをそれぞれ塑性流動および拡散流動による機構について同一線上で論じようとするものである。Herring-Naborroのクリープによる物質輸送機構は、歪速度の応力依存性によりWeertmanクリープと区別される。前者は歪速度は応力の4.5乗に比例し、後者は直接比例する。しかし上記の方法は、表面応力を駆動力とする焼結収縮速度と外応力下でもクリープ歪速度とを比較するという点で疑問が残る。
一般にWeertmanマイクロクリープに必要とされる応力レベルはHerring-Naborroマイクロクリープに対する応力レベルより大きいと仮定されている。それゆえ、塑性流動による焼結は拡散流動による焼結より大きな応力で起こると考えられよう。またこれは、塑性流動による焼結は、表面応力が十分に大きい焼結初期段階に限られ、応力が減少してくれば拡散流動が続いて起こることも意味する。この仮定は実験の節で述べたマーカー実験を説明するときにも用いた。焼結初期段階では塑性流動によりマーカーはマトリックスと一緒に動くと考えられ、従って細線間あるいは粒子間に形成されたネックの中央部に現れる。後期にはマトリックスは拡散流動により輸送されるので、マーカーは取り残され、その結果マーカーのない領域がネック表面近傍に形成される。
焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 祐介 共編
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