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転位の増殖と転位密度の観察|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

転位の増殖と転位密度の観察

ここでは、焼結中に転位が増殖されることを示す観察および増殖された転位の密度を算出するのに役立つ他の観察について述べる。
すでにイオン結晶について焼結中における転位の増殖についての研究がなされているが、金属結晶についての一つの研究は、MorganによるMgOの焼結中に増殖された転位の透過電顕観察であり、もう一つは、LiF粒子とへき開破面とのネック周辺に形成したエッチピット列のGeguzinらによる観察である。

透過電顕による転位の増殖についての観察は銀円板の焼結に対して行われた。
そこで得られた写真は、非常に薄い銀円板を焼結したものについて、転位の増殖が起こったことを示している。
Schattと彼の一派は、直径0.5 mmの単結晶銅球粒子を銅単結晶平板へ焼結する実験を報告している。
彼らは、焼結時間の経過とともに、すなわちネックサイズ と球粒子径 との比が増大するに伴って、球粒子と平板間のネックにおける転位密度は増大することを観察している。
最初の観察はエッチピット法による定性的なものであった。
定量的な測定は、修正コッセル法を用いておりX線回折線の広がりを測定して転位密度を決定している。
特性X線を励起するための電子ビームは直径10~15 μmに絞られる。
このようにして球粒子と平板の間のネック平面およびネック面の上下における平面における転位密度を測定することができる。

Schattは、球-平板焼結模型における転位密度の分布測定からゆるく充填した粉末集合体、球粒子圧粉体および市販粉の圧粉体にまで研究を拡張した。
球粒子-平板模型の拡張については、本論文では簡単に述べるにとどめる。
上記モデルにより焼結における塑性変形の役割を最もよく示すことができるからである。
ここでは実験結果のみを示す。どのような結論になるかは最終節で検討する。

透過電顕による転位の増殖の観察  

焼結初期段階における転位の増殖は、1972年に透過電顕により観察された。
十分に薄い単結晶銀フィルムを塩化ナトリウム結晶上にエピタキシャル成長させた。
ついで、そのフィルムを直径10~20 μmの銀球粒子でマスクして、アルゴンイオンを照射して円板状に成形した。
円板は各々接触しており、焼結初期段階のモデル形状を呈している。
焼結する前に、円板配列体を透過電顕で観察して、円板作製時のイオン照射による欠陥がないような円板対を選んだ。
円板配列体は、静止水素雰囲気中で焼結した。電顕の試料室の高真空下で焼結すると蒸発が厳しく円板配列体の観察が不可能になる。
一つの実験では、予備焼結した円板配列体を水素中で400 ℃、5分間焼結した。
配列対中のネックで焼結前は、0.8 μmの幅をもっていたものは、約1.6 μmに成長した。
ネックの曲率半径は、40 nmのオーダーであった。
焼結前にはネックは転位を含まなかったが、焼結により転位が導入され、からみあった転位配列が形成された。
物質輸送に塑性流動がどの程度寄与したかについては、回復効果が働いたため、観察された転位の数からは評価できなかった。

宗宮 重行・守吉 佑介 共編 「焼結-ケーススタディ」

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